日本歯科インプラント器材協議会

専門家からのメッセージ

インプラント治療における歯科衛生士の役割

日本歯科インプラント器材協議会のインタビュー第2弾として、インプラントコーディネーターとして活躍されている歯科衛生士の佐藤久美子さんに「インプラント治療における歯科衛生士の役割」についてお聞きいたします。

佐藤 久美子 先生

佐藤 久美子 先生

インプラントコーディネーター

略歴

  • 2000年3月 明倫短期大学 歯科衛生士学科卒
    2000年4月 ファーストリテーリング社ユニクロにて勤務
    2001年2月 退社後フリーでインプラントアシストを行う
    2004年6月 OJ 本会にてインプラントコーディネーターについて特別講演
    2005年9月 オリーブデンタルハウスを夫と共に開院
    インプラントコーディネーター・経営を担当
    2006年よりスウェーデンにて感染管理研修に参加
    スウェーデンハムルスタッド州立病院「Infection Control Training Course」修了

「インプラント・コーディネーター」とは、どのようなものですか?

佐藤久美子さん

私が考えるインプラントコーディネーターとは、インプラントのセールスを行うわけではなく、患者さんの健康増進のために納得していただける治療方法を詳しく説明する人材です。

とりわけインプラント治療は手術を伴う特殊な方法であり、正しい知識を習得する必要があります。

インプラント治療そのものが、日々進化を遂げているので、学会やセミナーへ積極的に参加し、常に最新の情報を患者さんに提供出来るようにしています。

インプラント・コーディネーターはドクターと、どのような連携や役割分担をされていますか?

佐藤久美子さん

ドクターには診断を行ってもらい、私が補足的な説明をするのが原則です。

事前にカルテは勿論のこと、全身疾患やCTや患者さんのライフスタイルなどを把握した上で、患者さんに最適な治療方法をディスカッションしてから、ドクターの診断にコーディネーターが同席します。

患者さんの癖など、ドクターにはなかなか伝わりきらない情報を院内スタッフから収集し、ディスカッションの際に伝える役割もあります。

インプラント治療を、どのような患者さんに勧められていますか?
エピソード等教えていただけたら幸いです。

佐藤久美子さん

興味を持っている方や、インプラント治療が行える患者さんには治療方法の一つとしてお話します。

患者さんの意向が一番大切ですので、拒否反応を示される方には簡単にお話を終わらせる時もあります。

下顎(かがく:下の顎)両側に単独歯欠損(たんどくしけっそん:1本の歯を失った場合)をお持ちの患者さんに、ドクターからは一度に2本の手術をしましょう、と提案されましたが、患者さんは不安感を強くお持ちであったため、まずは普段良く噛む側とは反対側のインプラント治療を勧めました。上部構造(じょうぶこうぞう:インプラントの上に装着するアバットメントおよび義歯)をしっかり装着した上で反対側の話をしようとしたら、私が話をする前に患者さんから反対側もインプラントにしたいとのご希望を伺いました。

カルテ上では、なかなか把握出来ない患者さんのパーソナリティやライフスタイルを良く理解した上で、インプラントの良さをお伝えしていくことが大切だと考えています。

インプラントの患者さんに対してはどのような注意を払い、またどのようなコミュニケーションをとられていますか?

佐藤久美子さん

利点や欠点を確実にお話することです。インプラント周囲炎も含め、手術をしたら終わりでは無く、長期にわたるメインテナンスの必要性をお話しします。

自由診療なので価格も医院によって違う。その理由もきちんと説明します。

ただ一方的に伝えるだけではなく、お話をしている際の患者さんの反応を確認しながらすすめることも大切です。

どんなキーワードに興味を示してるのかを見落とさないことです。

当院では、他のスタッフにも患者さんと積極的にお話をするように伝えておりますので、患者さんと仲良くさせていただくことが良くあります。

患者さんの心の奥底にある不安やご希望を、受付や待合室など、診療室以外でも伺えるように、配慮しています。

 

ここまでは患者さんにインプラント治療を勧める際のお話ですが、治療後の大切なメインテナンスについてのお話もお願いいたします。

術後のメインテナンスを行わないと、インプラントはどうなりますか?また、メインテナンスの頻度や期間は、どのくらいですか?

佐藤久美子さん

インプラントは齲蝕(むし歯)にはなりませんが、歯周病によく似た症状のインプラント周囲炎に罹患してしまうことがあります。インプラントは健康な歯に比べると歯茎の組織が脆弱なため、健康な歯に比べより丁寧な歯磨きが必要になります。

10年20年とインプラントを使っていただきたいのですが、それだけの期間が経過すると身体も年を取り、糖尿病や骨粗鬆症など全身疾患にかかる可能性も出てきます。

全身疾患は、時にインプラントに悪影響をおよぼしますので、定期的なチェックが必要となります。

メインテナンスは医院やインプラントの状態により異なりますが、できれば3ヶ月に一度は歯科医院に赴き、インプラントに問題がないかチェックをしてもらう必要があります。

定期的にメインテナンスに通うことで良好状態のインプラントを維持できます。

歯ブラシは特別なものが必要ですか?

佐藤久美子さん

インプラントの位置や上部構造の形態により特殊な歯ブラシが必要な場合もありますが、歯科医院で紹介された歯ブラシを使っていれば良いのでは無く、正しい歯磨きの方法を行う方が、どちらかというと重要です。また加齢に伴い、握力の低下や怪我、病気などで今までと同じ歯磨きが出来なくなる場合もありますので、気になることがあれば、担当の歯科衛生士やドクターに相談していただくと良いと思います。

インプラントを埋入した医院と、メインテナンスする医院は同じでなければならないでしょうか?

佐藤久美子さん

一言でインプラントといっても、現在市場に出ているインプラントには様々なメーカーの製品があります。

そしてメーカーによって特徴も違いますので、そのメーカーを使用しているインプラントに一番詳しい医院で、メインテナンスを受けるのが理想的だと言えます。

しかし、転勤やライフスタイルの変化で通院出来なくなる場合もありますので、その時には歯科衛生士やドクターに相談をし、転居先で通院出来る医院を紹介していただくと良いでしょう。その方がより長く安心してインプラントを使っていただけると思います。